βカロテンの吸収率を高めるのは油脂と調理。ドレッシングや炒め物がおすすめな理由。

ニンジンなどに多く含まれるβカロテンの吸収率を上げる方法を紹介!調理を工夫して生体利用を促進

にんじんや青菜などに多く含まれるβカロテンは、摂り方によって吸収率が大きく変動する栄養成分です。摂取方法が適切でないと、ほとんどが吸収されない場合もあるので注意しましょう。

緑黄色野菜を食べるとき、生で何もつけずに摂っていませんか。栄養価を考えると、ドレッシングをかけたり、炒め物にしたりするほうが正解です。

摂取したβカロテンを効率よく利用してキレイになるために、吸収率を高める食べ方や調理方法を覚えましょう。

生にんじんをかじってもβカロテンは摂取できない

βカロテンは脂溶性の栄養成分なので、脂質をほとんど含まない生の野菜や果物をそのまま食べるだけではほとんど吸収されません。脂質がなければβカロテンが溶け出さないので、体に吸収されることもないのです。

過去には、生の野菜や果物に含まれるカロテノイドの吸収率はわずか3%以下であると示した研究があります。また生のにんじんを摂取してからの24時間で、血中のβカロテン濃度が一度も上昇しなかったというデータも存在します。

そのため、βカロテンの吸収率を高めるという観点では、野菜や果物だけを生でそのまま食べることはおすすめできません。

βカロテンは油脂と一緒に摂ると吸収率が高まる

βカロテンは油脂と合わせて摂ることで吸収率が格段に上がります。油脂とは、動物の脂肪と植物の油のことです。

ある実験では、にんじんを油炒めにした場合、βカロテンの利用能が生食の7倍ほどになる※ことが確かめられています。また野菜サラダにドレッシングを加えることでβカロテンを含むカロテノイド吸収が大幅に上昇したという報告もあります。

上述の通り、βカロテンは脂溶性なので、溶け出せる油脂を合わせて摂ることで吸収率が高まるのは自然です。βカロテンが溶け込んだ脂質はタンパク質と結合して小腸で吸収され、血中を運搬されます。

※生物学的利用能(bioavailability)は、生のにんじんで11%、油炒めで75%。(1)

卵の脂質で吸収率が8.4倍になったという報告も

血中のカロテノイド量※摂取した脂質の量
野菜サラダのみ
(3gの植物油を添加)
14.9 ± 5.23.0g
サラダ+全卵1.5個44.8 ± 9.2
(サラダのみの約3倍)
10.5g
サラダ+全卵3個125.7 ± 19.4
(サラダのみの約8.4倍)
18.0g
※リポタンパク質中のカロテノイド含有量から算出した血中濃度曲線下面積(AUC)(3)

上記は調理した全卵の脂質がカロテノイドの吸収をどれだけ促進するかを調べた実験の結果です。健康な若年の男性に、野菜サラダとスクランブルエッグを食べてもらい、吸収率が調べられました。

βカロテンを含むカロテノイドの吸収率は、摂取するスクランブルエッグの量が増えるごとに上昇しました。上昇率は全卵1.5個分(脂質+7.5g)で約3倍、全卵3個分(脂質+15g)で約8.4倍です。

この結果は、食事中の脂質が増えることで、βカロテンを含むカロテノイドの吸収が大きく促進されることを示唆しています。加えて、リン脂質とコレステロールを多く含む卵の脂質の質がカロテノイド吸収に良い影響を与えた可能性も考えられます。

脂質制限はβカロテン吸収を抑制するので注意

上述した卵の実験において、βカロテンの吸収率が最も高まったのは脂質を18g摂取したときでした。1食あたり脂質18gというのは、日本人の平均的な脂質摂取量※と一致します。

このことから、日本人の一般的な食事スタイルはβカロテンの吸収を促進すると考えられます。自炊・外食を問わず、普通に食べていれば十分な脂質を摂取できるので、特別「油脂を摂ろう」と意識する必要はないでしょう。

βカロテンの吸収という観点では、ダイエット等で極端な脂質制限をすることは避けるべきです。βカロテンが十分に吸収されず、本来発揮されるはずの抗酸化作用やビタミンA活性が弱まってしまいます。βカロテンと同じく脂溶性のビタミンEの吸収も阻害されるので、医師からの指示でもない限り、ローファットダイエットはおすすめしません。

※令和元年国民健康・栄養調査報告によると、日本人の脂質摂取量の平均値は1日あたり61.3g(1日3食なら1食あたり20g強)

調理で食材の細胞壁を壊すことも吸収率を上昇させる

熱処理や機械的な均質化によって、フードマトリクス(食品の構造)を破壊することもカロテノイドの吸収率を高めるのに有効です。とくにβカロテンの放出を阻害する細胞壁を壊せば、吸収率が上昇することが実証されています。

具体的には、炒め物などの加熱調理、ジュースやピューレへの加工などによって細胞壁の破壊が可能です。加熱した野菜をフードプロセッサーにかけてスープやソースなどを作れば、さらに効率よく吸収率を高められるでしょう。

加熱調理してもβカロテンの機能は壊れない

「加熱するとβカロテン自体も壊れるのではないか」という疑念もあるかもしれませんが、これについては心配ありません。

たしかに野菜を炒めるなどすることで、βカロテンのビタミンAへの変換がわずかに減少するという報告はあります。しかし、加熱調理によって吸収率が大幅に高まるため、トータルでは利用能が格段に向上します。

ビタミンAへの変換率の減少を加味しても、加熱調理(油炒め)によってβカロテンの利用能は6.5倍になったという報告もあります。

吸収率を意識したβカロテン食材の摂り方

βカロテンの吸収率を高めるポイントは、「1. 脂質を加えること」「2. 調理で食材の細胞壁を壊すこと」。この2つを組み合わせた方法によって野菜や果物を摂取することで、効果的にβカロテンを体内で利用できます。

野菜炒め、とくに「卵炒め」はおすすめ

βカロテンの吸収率を上げる手っ取り早い調理方法は「野菜炒め」です。油でにんじんや青菜などを炒めることで、脂質も摂れて食材の細胞壁も破壊できます

またとりわけ卵の脂質がβカロテンの吸収に良いとの報告もあるため、野菜と卵を一緒に炒める「卵炒め」もおすすめです。「野菜炒めと目玉焼き」といった献立もよいでしょう。

手軽なのは「野菜ジュース+オイル」

手軽にβカロテンを効率よく摂るには、野菜ジュースやフルーツジュースもおすすめです。ジュースを作る過程で野菜・果物の細胞壁が壊されているため、比較的高い吸収率が期待できます。

より吸収率を高めるには、野菜(果物)ジュースにオリーブオイルなどの油脂を加えることです。コンビニで野菜ジュースを買うといった場合は、ナッツやゆで卵などもあわせて購入し、脂質を一緒に摂るのがよいでしょう。

まとめ:βカロテンは油で調理して摂るのがおすすめ!

野菜や果物に含まれるβカロテンは、油脂と一緒に摂ることで吸収率が格段に高まります。卵の脂質や植物油などとあわせて摂取することを心がけましょう

また加熱調理やフードプロセッサーなどで食材の細胞壁を壊すこともポイント。生のまま食べるのではなく、野菜炒めやスープ、ジュースなどに調理・加工して食べるようにしてみてください。

参考文献
  1. Ghavami A, Coward WA, Bluck LJ. The effect of food preparation on the bioavailability of carotenoids from carrots using intrinsic labelling. Br J Nutr. 2012 May;107(9):1350-66.
  2. Brown MJ, Ferruzzi MG, Nguyen ML, Cooper DA, Eldridge AL, Schwartz SJ, White WS. Carotenoid bioavailability is higher from salads ingested with full-fat than with fat-reduced salad dressings as measured with electrochemical detection. Am J Clin Nutr. 2004;80:396–403.
  3. Kim Jung Eun et al. Effects of egg consumption on carotenoid absorption from co-consumed, raw vegetables. The American Journal of Clinical Nutrition. 2015, 1, 102, 75-83.
  4. 池田彩子. 食事中の脂質は脂溶性ビタミンの吸収を増加させる . ビタミン91巻. 2017 , 10号(10月) , 613-616
  5. 厚生労働省. 第1部 栄養素等摂取状況調査の結果. 令和元年国民健康・栄養調査報告. 2020, p.68.
  6. Michael Netzel et al. Release and absorption of carotenes from processed carrots (Daucus carota) using in vitro digestion coupled with a Caco-2 cell trans-well culture model. Food Research International. 2011, 4, 44, 868-874.
  7. カゴメ株式会社 . “生にんじんよりも野菜・果実ミックスジュースの方がβ-カロテンを効率的に吸収できることを確認” . ニュースリリース. 2015/09/01