プレバイオティクスとは?意味やプロバイオティクスとの違い、効果、食品の種類など

プレバイオティクスにはビフィズス菌などプロバイオティクスを増やす効果!オリゴ糖やイヌリンなどから摂取

プレバイオティクスとは、腸内でビフィズス菌や乳酸菌などのエサとなる食品成分です。代表例として、フラクトオリゴ糖やラクチュロースなどのオリゴ糖、イヌリンをはじめとする水溶性食物繊維があります。

今回はそんなプレバイオティクスについて、効果やプロバイオティクスとの違い、多く含む食品などを紹介します。より良い腸活および食習慣を考えるうえでぜひ参考にしてください。

プレバイオティクスとは

プレバイオティクス(prebiotics)とは、腸内でビフィズス菌や乳酸菌のエサとなってその増殖を助ける食品成分のこと。主にオリゴ糖と水溶性食物繊維が該当します。

食品成分がプレバイオティクスになるための条件は以下の4つです。これは1995年頃に英国の微生物学者・Gibsonらが提唱したところによります。

食品成分がプレバイオティクスになるための条件

  1. 消化管の上部(胃や小腸)で消化、吸収されない
  2. 大腸に住む有益な腸内細菌(ビフィズス菌等)の栄養となり、その増殖を促進する
  3. 腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を改善・維持する
  4. 宿主の健康増進に寄与する

なお、プレバイオティクスの定義は時代とともに変遷しています。以下に最初の定義と最新の定義を載せておきますのでご確認ください。

プレバイオティクスの定義

定義提唱者
1995年
原文:A nondigestible food ingredient that beneficially affects the host by selectively stimulating the growth and/or activity of one or a limited number of bacteria in the colon, and thus improves host health.

意味:宿主に良い影響をもたらす難消化性の食品素材, 大腸で特定の微生物の成長や活動を選択的に促し、結果として宿主の健康が向上する
Gibsonら
2017年
原文:A substrate that is selectively utilized by host microorganisms, conferring a health benefit.

意味:宿主の微生物によって選択的に利用され、健康上の利益をもたらす素材
Gibsonら

プレバイオティクスの研究は人工乳の開発から始まった

プレバイオティクスの研究は、1900年代前半、ビフィズス菌を増やすための人工乳の開発にともなって始まりました。母乳栄養児の腸内はビフィズス菌が優勢ですが、人工栄養児でもこれを実現すべく、人工乳に何を入れたらいいのかが研究されたのです。

その結果、1957年に乳糖の異性体・ラクチュロースがビフィズス菌の増殖因子であることが判明。3年後の1960年には、日本において世界で初めてラクチュロースを配合した人工乳が登場しました。このラクチュロースが世界初のプレバイオティクスであり、それが初めて実用化されたのが日本なのです。

プロバイオティクスとの違い

プロバイオティクスは、ビフィズス菌や乳酸菌など宿主の健康に良い影響を与える微生物のことです。一方、プレバイオティクスとは、プロバイオティクスのエサとなってその増殖を助ける食品素材のことを指します。

なお、プレバイオティクスの「プレ(pre)」は、「先に、前に」といった意味です。プロバイオティクスに先立って働くのがプレバイオティクスと覚えるとよいでしょう。

腸活においては、腸内フローラを改善するプロバイオティクスと、そのエサとなるプレバイオティクスの両方を摂るのがおすすめ。プロバイオティクスとプレバイオティクスをともに摂取することを「シンバイオティクス」といいます。

プロバイオティクスについては以下の記事で詳しく解説しています。

プロバイオティクスとは?効果や代表例、おすすめの食品・サプリメントなどを紹介
プロバイオティクスとは、私たちの健康に良い影響を与える善玉菌のこと。ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌などが代表格です。大腸のプロバイオティクスを増やすことで、腸内環境が整い、整腸作用や免疫力の向上のほか、心身にさまざまな効果を期待できます。

プレバイオティクスの効果

プレバイオティクスには以下のように多様な効果があるといわれています。

ビフィズス菌の増殖

プレバイオティクスの基本的な効果は、ビフィズス菌をはじめとするプロバイオティクスを増やすことです。プレバイオティクスはプロバイオティクスのエサとなり、また細菌同士のエサの取り合いやクロスフィーディング(栄養共生)も促すとされています。

プレバイオティクスがビフィズス菌以外で増やすのは、乳酸菌・酪酸菌・ブラウティア菌など。複数の体に良い腸内細菌、すなわちプロバイオティクスが増えることで腸内フローラが改善し、さらなる効果(後述)がもたらされます。

整腸作用・便通改善

プレバイオティクスを摂ることで増えるビフィズス菌には、腸内フローラのバランスを改善し、お腹を整える効果があります。ビフィズス菌が産生する乳酸・酢酸といった短鎖脂肪酸によって腸内が酸性に傾き、有害菌と腸内腐敗物質が減少するからです。

またプレバイオティクスの一種である水溶性食物繊維には、便にうるおいを与えてやわらかくし、便通を促す効果も。そのため、プレバイオティクスの摂取は、複数の観点から、お腹の調子を整え、便通・便秘を改善するのにおすすめです。

便秘に伴う肌荒れの改善

プレバイオティクスの摂取で腸内腐敗物質が減少すれば、ニキビや吹き出物、毛穴、色ムラといった肌荒れも改善する可能性があります。アンモニアやフェノールといった腐敗物質は、腸管から血流を介して皮膚まで到達するため、それらを減らすことは美肌につながります。

実際、プロバイオティクスの摂取により、女性の慢性便秘に伴う肌荒れが改善されたという報告も。よって、ビフィズス菌などプロバイオティクスを増やすプレバイオティクスの摂取は、美肌づくりにも有益です。

便秘と肌荒れの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

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カルシウムなどのミネラル吸収促進

プレバイオティクスにはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル吸収を促進する効果もあるといわれています。ビフィズス菌などが産生する短鎖脂肪酸によって腸内のpHが低下し、カルシウムやマグネシウムが溶けやすくなるからです。

ミネラルは骨や歯、神経、筋肉など、さまざまな部分の健康維持に関係します。そのため、プレバイオティクスの摂取は、ミネラルの吸収促進を通じて総合的な健康効果をもたらすと考えられます。

コレステロール低下などの血中脂質改善

プレバイオティクスによって増えるプロバイオティクスには、血中脂質を改善する効果もあるといわれています。効果の要因は、ビフィズス菌や乳酸菌が、脂質の吸収に関与する胆汁酸を加水分解(脱抱合)する酵素を持っていることです。

またビフィズス菌や乳酸菌が産生する短鎖脂肪酸には、悪玉LDLコレステロールの合成を抑制する作用もあるといわれています。プロバイオティクスによる血中脂質の改善は、脂質異常症、動脈硬化、メタボリックシンドロームなどの疾患予防につながります。

インスリン抵抗性の改善

プレバイオティクスをエサとするビフィズス菌や乳酸菌などには、インスリン抵抗性を改善する効果もあると報告されています。インスリン抵抗性とは、インスリンの感受性が低下してインスリンが効きにくくなること。2型糖尿病の患者に顕著に見られる症状です。

プロバイオティクスのうち、インスリン抵抗性の改善効果に作用するとされているのが、Alistipes属の腸内細菌。Alistipes属はヒトの腸内に生育する腸内細菌であり、プレバイオティクス(エサ)を与えて増やすことが可能です。

エネルギー消費量の増加によるダイエット効果

肥満男性へ短鎖脂肪酸を投与すると、エネルギー消費量が増えたというデータがあります。短鎖脂肪酸を作るのはビフィズス菌や乳酸菌なので、プレバイオティクスを摂取することで増やせます。そのため、プレバイオティクスを摂ることで消費カロリーが増え、ダイエット効果が得られる可能性もあるでしょう。

なお、プレバイオティクスであるオリゴ糖や水溶性食物繊維は、ともに低カロリーであり、整腸作用もある食品素材です。よって、摂取カロリーを減らしたり、血糖値の急上昇を抑えたり、むくみの改善といった観点でもダイエット効果が期待できます。

大腸がんや炎症性腸疾患の予防

腸内細菌叢の状態と大腸がんは関連しており、シンバイオティクス*による整腸はがん予防にもつながると考えられています。実際、プロバイオティクスやガラクトオリゴ糖などの摂取により、大腸がんの原因となる有害菌が減少したというデータもあります。

また潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も、シンバイオティクスが効果を発揮するといわれている疾患です。炎症性腸疾患に伴う腸内フローラの乱れをプレバイオティクス・プロバイオティクスが改善し、症状を緩和させます。

*シンバイオティクス:プロバイオティクスとプレバイオティクスを両方摂取すること。ビフィズス菌とフラクトオリゴ糖など。

花粉症などアレルギー疾患の抑制

腸内細菌とアレルギーにも相関があることがわかっており、プレバイオティクスによる整腸はアレルギー改善にも効果を発揮します。

事実、プロバイオティクスの投与でアトピー性皮膚炎が予防された、アレルギー性鼻炎や花粉症が改善したという報告があります。よって、プロバイオティクスを増やすプレバイオティクスにも、アレルギーを予防・改善する効果があるといえるでしょう。

またオリゴ糖のケストースと水溶性食物繊維のイヌリンは、食物アレルギーの予防効果が注目されているプレバイオティクスです。

腸管免疫系への作用

乳酸菌やビフィズス菌には、腸管におけるIgA抗体(免疫グロブリン)の産生を増強する効果も確かめられています。そのため、プレバイオティクスも、ビフィズス菌等の増殖を助けることで腸管免疫の増強に効果を発揮すると考えられます。

IgA抗体は病原菌や毒素に対する感染防御の機能を持つ免疫グロブリンの一種です。多種類の細菌やウイルスに反応する特性を持つため、IgAを増強することで広範囲に感染予防の効果を期待できます。

またIgA抗体と腸内細菌には相互作用があり、プロバイオティクスがIgAを増やす一方で、IgAには腸内細菌を制御する作用も。よって、シンバイオティクスによって腸管免疫系を増強すれば、IgAの作用で腸内フローラの安定性が高まる可能性もあります。

プレバイオティクスの種類

プレバイオティクスの代表例は、難消化性オリゴ糖と水溶性食物繊維です。プロピオン酸菌による乳清発酵物など、プレバイオティクスとして機能するその他の食品素材も一部存在します。

難消化性オリゴ糖(フラクトオリゴ糖など)

プレバイオティクスとなる食品素材のうち、最も代表的な種類が難消化性オリゴ糖です。「難消化性」とは、胃や小腸で分解、消化されずに大腸に到達するとの意味で、そこでビフィズス菌・乳酸菌といったプロバイオティクスのエサとなります。

難消化性オリゴ糖がプレバイオティクスとして優れている点は、善玉菌の栄養源となる一方で、悪玉菌の栄養源にはならない(資化性がない)こと。腸内フローラに良いプロバイオティクスだけを選択的に増殖させられる魅力的な食品素材だといえます。

複数の種類があるオリゴ糖のうち、一番有名なのは1982年に明治がプレバイオティクスの機能性を発見したフラクトオリゴ糖です。そのほか、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ビートオリゴ糖など、多種類の難消化性オリゴ糖が存在します。

ちなみに母乳の成分であるヒトミルクオリゴ糖(HMOs)も、人体にとって重要なプレバイオティクスです。母乳からプレバイオティクスを摂取することで乳児の腸内はビフィズス菌優勢となり、感染症の予防や脳の発達などの恩恵が生まれます。

プレバイオティクスとなるオリゴ糖の種類

二糖類ラクチュロース,セロビオース,イソマルトース
三糖類ラフィノース(ビートオリゴ糖),ラクトスクロース(乳糖果糖オリゴ糖),1- ケストース,4’- ガラクトシルラクトース
混合物フラクトオリゴ糖,ガラクトオリゴ糖,大豆オリゴ糖,キシロオリゴ糖,ヒトミルクオリゴ糖,イソマルトオリゴ糖
参考: 腸内細菌学雑誌 33 : 165-174,2019

水溶性食物繊維(イヌリンなど)

イヌリンやグァーガムなどの一部の水溶性食物繊維もプレバイオティクスとして機能する食品素材です。オリゴ糖ほど急速には資化(栄養利用)されないものの、プロバイオティクスのエサとなり整腸効果を発揮します

水溶性食物繊維のうち、資化率(腸内細菌による利用率)が高いのは、イヌリン、グァーガム、水溶性ペクチン。中でもイヌリンの資化率は100%で、腸内細菌に栄養源として使い切られるため、優秀なプレバイオティクス素材といえます。

プレバイオティクスとなる水溶性食物繊維の種類

水溶性食物繊維
イヌリン,グァーガム,グァーガム加水分解物, 水溶性ペクチン, アルギン酸,ポリデキストロース,難消化性デキストリン, アラビアガム
参考: 腸内細菌学雑誌 33 : 165-174,2019

不溶性食物繊維はプレバイオティクスではない

不溶性・水溶性と2種類ある食物繊維のうち、不溶性食物繊維はプレバイオティクスではありません。大腸を通過する限られた時間の中では腸内細菌もそれを消化できず、エサとして利用できないためです。

ただし、不溶性食物繊維は、プロバイオティクスが腸内で増殖するための足場やすみかになっているという説もあります。またプレバイオティクスにはならなくても、不溶性食物繊維は便のかさとなり、腸管を刺激することで整腸効果を発揮します。

プロピオン酸菌による乳清発酵物

プロピオン酸菌による乳清発酵物は、エメンタールチーズ由来の乳清をプロビオン産菌で発酵させて作るプレバイオティクスです。いくつかの主要成分がビフィズス菌の増殖因子であり、腸内環境を整える機能を有します。

プロピオン酸菌による乳清発酵物はかつて、特定保健用食品を含め、多数の商品にプレバイオティクス素材として用いられてきました。代表的な商品としては明治の「おなか活力タブレット」、ファンケルの「おなかピオ」などが挙げられます。

しかし、それら商品の多くはすでに生産終了となっており、現在ではあまり一般的なプレバイオティクス素材ではありません。犬の整腸をサポートする栄養補助食品など、一部の動物向け商品には現在でも用いられているようです。

プレバイオティクスを含む食品

プレバイオティクス素材の難消化性オリゴ糖や水溶性食物繊維は、以下の食品に多く含まれます。またそれらの成分をメインに配合した特定保健用食品や機能性表示食品を利用するのもおすすめです。

オリゴ糖:ゴボウ、玉ねぎ、はちみつ、ライ麦など

オリゴ糖を多く含む食品は、ゴボウ、玉ねぎ、はちみつ、ライ麦、ニンニクなどです。中でもゴボウはオリゴ糖の含有量が多く、1本(150g)で5g以上のフラクトオリゴ糖を摂取できます。

サプリメント感覚で摂取したいのであれば、シロップタイプや顆粒タイプの健康食品を利用するのもよいでしょう。オリゴ糖の健康食品には、ビフィズス菌や乳酸菌が合わせて配合されている場合も多く、プロバイオティクス+プレバイオティクス=シンバイオティクスを手軽に実践できます。

水溶性食物繊維:らっきょう、大麦、プルーンなど

水溶性食物繊維を多く含む食品は、らっきょう、エシャロット、大麦、ニンニク、あんず、プルーンなどです。そのほか、もずくやなめこ、納豆などのネバネバ食材にも、比較的多くの水溶性食物繊維が含まれます。

またサプリメント感覚で効率よくプレバイオティクスを摂取したいのであれば、イヌリンや難消化性デキストリンなどの健康食品(顆粒タイプ)を利用するのもよいでしょう。小さじ2杯ほどで十分なプレバイオティクスを摂取できるため、続けやすいことはもちろん、摂取カロリーも抑えられてダイエット向きでもあります。

プレバイオティクスの過剰摂取による副作用

プレバイオティクスを過剰摂取することで起こりえる副作用は一過性の下痢です。感染症に伴う下痢に比べて危険性は低いものの、一時的に水分やミネラル、腸内細菌による諸効果を損失する可能性があります。

また腸内発酵が過剰になることでディスバイオシス(腸内フローラの乱れ)が起こるともいわれています。さらに大腸表皮にダメージを与え、腸のバリア機能が低下する可能性があることもデメリットです。

プレバイオティクスが腸活に良いとはいえ、一度に大量摂取するのはおすすめできません。常識的な範囲で毎日適量を摂取し、数週間かけて腸内細菌を育てていくのが、プレバイオティクスを用いた理想的な腸活です。特定保健用食品や機能性表示食品などを摂る場合は、商品ごとの摂取量の目安を参考にしましょう。

まとめ:オリゴ糖やイヌリンなどのプレバイオティクスで腸活を!

プレバイオティクスは、ビフィズス菌に代表されるプロバイオティクスを増やし、整腸効果を発揮する食品素材です。摂取することで腸内細菌のバランスが整い、便秘改善をはじめ、さまざまな健康への好影響が期待されます。

プレバイオティクスの代表例は、オリゴ糖と一部の水溶性食物繊維(イヌリンなど)。それらを含む食品の摂取を習慣にして、より良い腸活を実践しましょう。