活性酸素とは?身体への悪影響や紫外線との関係、減らすための方法などを解説

活性酸素および抗酸化作用は、美容や健康を考えるうえで外せないキーワードです。老化現象と生活習慣病のほとんどは、活性酸素との関連で説明できると言っても過言ではありません。

今回は活性酸素について、概要から減らす方法まで、わかりやすく解説します。エイジングや病気を予防し、いつまでも健康で美しくいたい方は、ぜひ参考にしてください。

活性酸素とは

活性酸素とは、生体内で発生する反応性の高い酸素化合物の総称です。「活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)」とも呼ばれます。

活性酸素には化学的に不安定がゆえの攻撃性があり、酵素やビタミン類などによって消去されなければ、細胞傷害を引き起こします。そのため、活性酸素は、シミやたるみなどの老化、がんや動脈硬化といった各種疾患の主因です。

一方、白血球の食作用をはじめ、生体には活性酸素の攻撃性を活かす機能も備わっています。またがん細胞を死滅させる放射線治療や光線力学的療法をはじめ、活性酸素を利用した医療テクノロジーもあります。

活性酸素種(ROS)の種類

活性酸素種は、狭義には、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素の4種類です。広義には、次亜塩素酸イオンや一酸化窒素なども活性酸素に数えられます。

活性酸素種のうち、最も基本的なものは酸素分子が不完全に還元されて生じるスーパーオキシドです。例外もありますが、より反応性の高い過酸化水素やヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸などは、スーパーオキシドから派生します。

なお、人間の体は、酸化ストレスの根源であるスーパーオキシドを、酵素によってきわめて早く消去するシステムを備えています。

主な活性酸素種

化学式名称英語表記
O2スーパーオキシド(ラジカル)superoxide radical
H2O2過酸化水素hydrogen peroxide
HO・ヒドロキシルラジカルhydroxyl radical
1O2一重項酸素singlet oxygen
HOO・ヒドロペルオキシルラジカルhydroperoxyl radical
ROOHアルキルヒドロペルオキシドalkylhydroperoxide
ROO・アルキルペルオキシルラジカルalkylperoxyl radical
RO・アルコキシルラジカルalkoxyl radical
CIO-次亜塩素酸イオンhypochloride ion
Fe4+Oフェリルイオンferryl ion
Fe5+Oペリフェリルイオンperiferryl ion
NO・一酸化窒素nitric oxide
出典:「活性酸素の基礎と臨床」参考文献1

活性酸素種(ROS)が発生する場所

ミトコンドリアや白血球、肝臓、細胞質など、体内には活性酸素種の発生源が多数あります。

例えば、エネルギー源(ATP)を生成するためにミトコンドリアが消費する酸素のうち、1〜3%は活性酸素に変換されます。つまり呼吸で取り込んだ酸素の数%は、必ずミトコンドリアで活性酸素種に変わるということです。

また白血球の食細胞は、細胞や粒子などに反応すると、酸素の消費を一気に増やして膨大な活性酸素を生成します。食細胞が持つ殺菌や抗腫瘍などの効果は、活性酸素の攻撃性に由来するものです。ただし、白血球で過剰に生成された活性酸素は、自己免疫疾患や虚血再灌流(さいかんりゅう)障害などの炎症反応にもつながるとされています。

活性酸素が増える原因

活性酸素の生成量は、下記に挙げるような原因によって増加します。過剰に生成された活性酸素は老化や疾患の原因となるため、生活改善をはじめ、活性酸素を減らす対策が必要です。

加齢(エイジング)

年齢を重ねると体内で生成される活性酸素の量は増加していきます。一方、活性酸素を消去するSOD酵素は、加齢によって変化しません。

そのため、歳を取れば取るほど、SODの消去能力を上回って活性酸素が生産される可能性が高まります。消去される量よりも生産される量のほうが大きくなれば、酸化ストレスとなり、老化や病気の原因となります。

中年期・高年期にこれまでになかったような老化や生活習慣病などが出てくるのは、上記のようなメカニズムがあるからです。

過度な運動

一過性の運動によって骨格筋の活性酸素が増えることが、蛍光色素を用いた解析で確かめられています。とくに激しい運動では、膨大な酸素を消費するため、活性酸素の生成も多くなると考えられます。

よって、ダッシュや長距離走など、強度の高い有酸素運動を行う場合は、量と頻度に注意が必要です。あまりに負荷が大きいと、活性酸素による細胞傷害が顕著となり、老化や疾患につながる恐れがあります。

紫外線

紫外線を浴びることによっても、細胞内の活性酸素は増加します。紫外線が細胞を変性させ、活性酸素の生成割合が増えてしまうというメカニズムです。

また発生した活性酸素から炎症因子が出され、さらなる細胞変性が引き起こされることも報告されています。そのため、ひとたび紫外線に暴露されると活性酸素の増加を伴う細胞変性が伝播していき、広範囲に光老化が生じる恐れがあります。

ストレス

精神的なストレスは、活性酸素の発生因子の一つであるコルチゾールを増加させます。同時に、活性酸素を消去する働きであるSOD活性が低下することも確かめられています。

つまりストレスは酸化ストレスを増大させるとともに、人体の抗酸化作用も低下させてしまうということです。

その他の要因

活性酸素は、タバコや大気汚染、放射線、薬品、アルコールなどの要因でも増加します。“美容や健康にとって良くないこと”には、たいてい活性酸素が深く関わっていると考えてもよいでしょう。

例えば、タバコの発がん作用には、発がん性物質よりも喫煙によって生じる活性酸素のほうが大きな影響を果たしているともいわれます。また放射線はそれ自体でも細胞を死滅させますが、放射線の照射によって生じる活性酸素も細胞死をもたらします。

活性酸素が身体に与える悪影響

活性酸素による人体への悪影響は、主に老化と疾患です。下記の通り、その弊害は多岐に及ぶため、美容と健康においては抗酸化の意識がとりわけ重要だといえます。

老化:シミ、しわ、白髪など

私たちを悩ませる老化の多くは、活性酸素と密接に関係しています。例えば、シミの原因は、活性酸素がメラノサイトにおけるメラニン産生を促進することです。

また活性酸素によって生じるカルボニルタンパクという変性タンパク質は、コラーゲンやエラスチンを分解します。これらの分解によって真皮の弾力性が損なわれると、しわやたるみが生じます。

さらに白髪や薄毛といった毛髪の老化も、活性酸素と関わりが深い現象です。白髪は活性酸素がメラソームの輸送を妨げることで、薄毛は活性酸素が毛細血管の構造を壊してしまうことで生じます。

疾患:がんや動脈硬化など

活性酸素は、脂質やタンパク質、DNAなどの生体物質を攻撃する危険性を持つ物質です。そのため、活性酸素は、がんや動脈硬化をはじめ、さまざまな疾患の原因となりえます。

例えば、がんの発生メカニズムには、活性酸素によるDNAの損傷が関連しているといわれています。またマウスの抗酸化物質を欠損させると、動脈硬化が発症、進行することも実験によって確かめられています。

そのほか、心筋梗塞やアルツハイマー病、パーキンソン病、白内障、糖尿病、自己免疫疾患など、活性酸素が関連する疾患は多種多様です。

活性酸素を減らす方法

老化や病気を予防し、健康的に長生きするためには、活性酸素をなるべく減らすことが重要です。活性酸素を減らす方法には、以下のような手段があります。

抗酸化を意識した食生活の実践

活性酸素による酸化ストレスの蓄積は、食生活との関連が大きいといわれています。食事やサプリメントから活性酸素を消去できる抗酸化物質を摂取することを心がけましょう。

具体的には、アスコルビン酸(ビタミンC)やトコフェロール(ビタミンE)、カロテノイドの摂取がおすすめです。加えて、アントシアニンやカテキンなどのポリフェノールにも、高い抗酸化作用が期待できます。

一方、脂質や塩分、糖分の過剰な摂取は、活性酸素を増やす要因になるとされています。そのため、暴飲暴食を避け、適度なカロリー制限をすることも大切です。

なお、抗酸化作用や抗酸化物質については下記の記事でも詳しく解説しています。こちらもぜひあわせてお読みください。

継続的かつ適度な運動

定期的かつ持久的な運動トレーニングは、身体の抗酸化能力を高めるという報告があります。実験では、60分までの運動では時間に、90分の運動では強度に比例して活性酸素を除去するSOD酵素の活性が高まったそうです。

よって、ウォーキングやジョギングなどの無理のない有酸素運動を継続することは、酸化ストレスの除去に効果的といえるでしょう。ただし、過度な運動は、活性酸素をむしろ増やす要因となるので注意してください。

紫外線対策の徹底

紫外線は細胞を変性させて活性酸素を増やし、シミやしわ、白髪などの光老化を引き起こします。この光老化は老化の8割ともいわれるので、いつまでも美しくいるために紫外線対策は必須です。

日焼け止めを毎日塗ることはもちろん、2〜3時間ごとに塗り直しも行いましょう。また日傘やサングラス、アームカバーなど、物理的にUVをカットする対策も併用するのがおすすめです。

ストレスの予防と解消

精神的なストレスは、抗酸化の大敵です。ストレスは活性酸素を増やす原因にも、体の抗酸化能力を下げる原因にもなってしまいます。

そのため、活性酸素から身を守るには、過度なストレスがかからないような環境づくりが大切です。またストレスが蓄積しないよう、自分に合った発散方法も見つけておきましょう。

美容との関連では、メイクアップにこだわることもおすすめです。メイクアップには精神的ストレスを緩和する効果があることが研究によって確かめられています。

活性酸素を消去する栄養素

活性酸素を消去できる主な栄養素は、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、カロテノイド(プレビタミンA)、ポリフェノールの4種類です。活性酸素による酸化ストレスから生体を防御してくれるこれらは「抗酸化物質」と呼ばれます。

それら4種類の抗酸化物質は、以下のような食品から摂取が可能です。

抗酸化物質食品
アスコルビン酸(ビタミンC)ゆず、キウイ、ピーマン、じゃがいも、玉露など
トコフェロール(ビタミンE)かぼちゃ、にんじん、トマト、ケール、鮭、わかめ、エビなど
カロテノイド(プレビタミンA)米ぬか油、ひまわり油、アーモンド、落花生、うなぎなど
ポリフェノール赤ワイン、ブドウ、緑茶、ごま、大豆、チョコレート、そば、玄米など

普段から抗酸化物質を継続的に摂取することで、活性酸素による老化や生活習慣病の予防が期待できます。食べ物・飲み物で十分な栄養素を摂るのが難しい場合は、サプリメントの利用も検討してみましょう。

まとめ

活性酸素は細胞に対する攻撃性を持つため、シミやしわ、白髪などの老化の原因となります。それだけでなく、活性酸素の生成が過剰になると、動脈硬化やがんなどの病気を発症する恐れもあります。

そのため、日頃からアスコルビン酸やトコフェロールなどの抗酸化物質を摂取し、活性酸素を消去することが重要です。同時に、適度な運動やカロリー制限、徹底した紫外線対策など、活性酸素を増やさないための取り組みも意識して行いましょう。

参考文献
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